横田南嶺

今、こうして目の前で話しを聞いているもの、これこそが仏なのであります。それに気づくには心の向きを変えることが必要です。外に向かって働く心を内に向ける。 外に向かって働く心というのは、たとえば、今し方、ヘリコプターが轟音をたてて上空を過ぎる音がしましたが、それを聞いて 「あの音はうるさい!せっかく坐禅をしているのに何だ!」 や 「あれはいったい何の音だ?何かあったのだろうか?」 と思うのは外に向かっている方向です。 その流れを変えて自分にこう問いかけてみる。「その音を聞いているものは何ものか?」 と。そうして心の向きを外から内に変えてみると外の音が何であろうが関心はなくなってしまうでしょう。 「今、こうして、聞いているものは何ものであるか?」 と自らに問いかけると 「今、こうして聞いているものこそ仏であった!」 と気づくはずです。このことを深く信じることが 「自らを信じること」 ということなのです。 こうして信じることができるならもう外の世界に振り回され、惑わされることもないはずです。